昭和38年 Ab型

昭和38年Aa型は昭和34年、35年、36年、37年、38年に見ることができます。以下、昭和をSと略記します。同じ刻印で同じ図案であることが分かります。S38年銘全体を100とした場合の存在率は前期タイプが4割に対し後期タイプのAb型のほうは6割でしたがS27年前期後期のように変わりはないため評価が異なることはありません。市場ではAa型が少ないことは確かです。
今回は昭和38年Ab型の後期タイプを取り上げます。S38年、39年、40年と続きます。いづれも同じ刻印が使われています。以下に拡大写真と特徴を示します。
昭和38年Ab型 後期タイプ 右隅楼破風(昭和38年~40年タイプ)

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右隅楼軒先:2本線
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右隅楼軒先:2本線
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流通品の場合、Aa型なのかAb型か判断に迷う時がありますが摩耗されていないものを集めるようにしましょう。両者を拡大鏡で判別できるようになれば手変わりはより楽しみが増すこと間違いありません。
手変わり品と明示しない通常品でも立派な手変わりになるということに注意してください。年号面や「国」「四」などの文字形状の差異は無視し、収集家が分かりやすいように分類しました。

昭和38年 Aa型

現行10円青銅貨の昭和38年銘には、「右前楼破風:昭和34年~38年タイプ」のAa型と「右前楼破風:昭和38年~40年タイプ」のAb型に分類できます。刻印の製作時期からAa型が先に作られ後にAb型が作られたと推測します。

今回はAa型の前期タイプを取り上げます。私の調査では4対6の割合でAa型のほうが少なめでした。

基本刻印タイプ(基本形)以外の組み合わせは稀少品~珍品であり、コレクターから注目されている組み合わせ手変わりです。実は、これらの稀少タイプを見つけること、稀少タイプに出会ったら見逃さないこと、稀少価値の極めて高い貨幣を見つけること、信頼できるコレクターからの報告で存在の報告はあるが現品未確認のものを見つけ出すことが貨幣収集の醍醐味の一つなのです。

初心者の方は、まず、基本形(=標準品)のことをよく知り実際に収集してみることにより、次の段階である稀少品収集への展開が容易になることがご理解いただけたと思います。

昭和38年 Aa型 右前楼破風:昭和34年~38年タイプ

右前楼破風の形状の変化に注目をしました。

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下記に拡大写真と特徴を示します。

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右前楼破風:昭和34年~38年タイプ

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今日の分類収集の考え方においては、通常品も一つの変化(標準的変化)とみなし、「手変わり」の一つに含めて分類します。様々な変化の組み合わせである「組み合わせ手変わり」はその進行形です。

参考文献

亀谷雅嗣「日本の近代銀貨 手変わり収集入門編(1) 旭日竜50銭銀貨
」2009年、書信館出版。

昭和37年 Aa型

昭和37年 Aa型 
年号面
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現行10円青銅貨の場合、鳳凰面刻印が年号すなわち時間軸に沿って順に製作され(したがって年号銘に対して綺麗に分類可能)であることが分かると思います。拡大鏡を使ってはいけない一部の業者さんを除き、基本形から外れた稀少~珍のタイプは見逃している場合も多く、初心者でも一般市場で拾える可能性も十分あります。
なお、昭和44年以降に発行されたミントセット(ビニール製)はセロファンで覆われているだけなので店主に断って中身を見せてもらうようにしましょう。ただし、昭和59年以降に製造されたプラスチック製のものは中身が見られないことが多く困っています。
以上、初心者の方は、まず基本形(=標準品)をよく知り実際に収集してみることにより、次の段階である稀少品収集への展開が容易になることをご理解いただけたと思います。実は、ベテラン収集家も同じような収集手法によって、稀少変化の推測や特徴の勉強などをしつつ分類収集していくケースが多いのです。
最初から稀少品であることを推測し、その特徴を正確に掴むことはベテランにとっても困難であり、ゆえに、市場に豊富にある標準品の特徴をよく知ることから始め、それらとの差異を研究し分類収集を発展させるわけです。
 

昭和36年 Aa型

昭和36年銘の刻印発生の流れとしては、S34、35、36、37年、38年までのAa型が挙げられます。38年はAa型とAb型に分類できます。徐々に刻印が変化していきます。
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ACCA MS64RB(今回、参考にしたものです)

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昭和36年 Aa型 ギザ無し
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昭和26年銘から昭和33年銘の手変わり分類表

                                                                                                                                                                                       

最新手変わり分類表 手変わり分類(特徴式)
 昭和26年 Aa型に似る 鳩型鳳凰orめんどり  ギザ有
 昭和27年 前期 Aa型に似る 鳩型鳳凰orめんどり  ギザ有
  後期 Aa型に似る 鶏型鳳凰orおんどり  ギザ有
 昭和28年 Aa型に似る  ギザ有
 昭和29年 Aa型に似る  ギザ有
 昭和30年 Aa型に似る  ギザ有
 昭和32年 Aa型に似る  ギザ有
 昭和33年 Aa型に似る  ギザ有

昭和35年 Aa型

手変わりの定義について書物によって様々ですが、『日本の貨幣‐収集の手引き‐』1998年、190ページによると「機械打ちの貨幣は一見すると全く画一的に見えますが、同じ額面、同じ年号でありながら細部に違いのあるもの」を手変わりと呼んでいます。
つまり、10円青銅貨の場合は周囲にギザがあるかないかで同じ図案でも記号が異なります。例えば、昭和26年銘から昭和33年銘のギザ有はAa型に似るであり、昭和34年以降のものは同じ図案でも記号が異なってくるわけです。あえてAa型としました理由はこのあたりにもあります。微妙ですね。近代銀貨研究会の組み合わせ手変わりなども参考にさせていただきました。
今回は同じAa型でも翌年製造された昭和35年銘のものを解説します。なお、図案の変更はありません。
昭和35年 Aa型 ギザ無し(昭和34年銘より周囲にギザがなくなりました)
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存在率:昭和35年号全体

おんどり(鳳凰形状:鶏型鳳凰)、階段切れ目有

昭和34年 Aa型

昭和26年銘から昭和33年銘までのギザ有10円青銅貨の手変わりに関してはお分かりいただけたと思います。今回から昭和34年銘以降のAa型について述べていきます。この記号は喀龍・神吉氏が分類されたことを基本としています。
 
なぜ「収集」誌に新しい手変わり分類表が掲載されないのか疑問を抱いていました。1994年版の「日本貨幣カタログ」の発行より22年ほどが経過しています。同様に「収集」2006年9月号19頁を最後に発表されていません。
その後の現行貨幣の手変わり分類方法も進化をしており鈴木和三郎氏による『日本の現行貨幣・収集の手引き』2011年が新たに発行されました。

神吉廣純氏が1993年5月の第4回東京国際コインコンヴェンションの行事として開催された「第1回全国貨幣収集家の集い」で「10円青銅貨・昭和61年後期について」という研究論文と10円青銅貨手変わり分類表を発表したことで、日本貨幣カタログの編集委員の目にとまり毎年の特集として掲載されました。そのため10円青銅貨手変わり分類表は一度限りの掲載に終わっているということです。

「日本貨幣カタログ」1994年、特集や「収集」2006年9月号、19頁、書信館出版株式会社に現行10円青銅貨の手変わり分類表が発表され掲載されたことからこの同じ記号を付けました。
昭和34年 Aa型 ギザ無し この年銘以降周囲にギザがなくなりました
基本形(標準品)だけしか存在しません。
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存在率:昭和34年号全体
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おんどり(鳳凰形状:鶏型鳳凰)、階段切れ目有

日本貨幣図史

勤務先の上司より「日本貨幣図史」小川浩著、日本古銭研究会 (1964)の第1巻より第6巻までを譲っていただきました。貴重な資料で何かお返しをしなければならないなどとも思ってしまう。でもいらない人には不要だし、すぐにゴミに出してしまうだろう。前にもコインの話をしたことを思い出しました。結構、自分が忘れているものでも人はよく覚えてくれているということが分かりました。
茨城貨幣研究会に寄贈するか考えています。この書籍は全10巻のものということが検索してみてわかりました。
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内容は古く情報が少ないうえに後日訂正された点も多いと思う。ただ、古本好きにはいいかもしれません。寛永通宝が拓本で掲載されていて勉強になります。よく読んでみます。

昭和33年 Aa型に似る

現行10円青銅貨の発行枚数が最も少ないのが昭和33年銘となります。状態の違いによって評価が大きく異なってきます。スラブ入りのMS64RDなど高値になっています。銅貨はRBよりもRD評価のほうが値段が高い。
昭和33年銘 Aa型に似る ギザ有

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収集家の数の違いによって近代銀貨研究会のように太さや形状などの違いで異なる分類をされてもいいでしょう。現行貨幣の手変わり
は収集家の数が極めて少ないため分類しても無駄のようにも思われます。
唯一、1993年頃キュリオマガジン誌上に旧500円白銅貨の手変わり分類が掲載されました。
葉脈の数の違いなど近代銀貨に極めて似た分類をされています。

昭和32年

昭和31年銘は長い10円青銅貨の歴史の中で唯一製造されていません。現在まで平成28年銘まで独立行政法人 造幣局の正式見解によると図案の変更はされていないとの回答で手変わりは存在しない。拡大鏡で観察すると手変わりが見られるものもありますので矛盾をすることになりますが収集を楽しんでください。趣味は楽しければ何でも構いません。
昭和32年 Aa型に似る ギザ有
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昭和26年から昭和33年までギザ有で階段切れ目有です。この状態がマイナーチェンジの行われる昭和34年Aa型から昭和56年Bf型まで続きます。
昭和32年銘も1種類しかありません。
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コイン各部の名称は鈴木和三郎氏の「日本の近・現代のお金」
を参照されたい。引用させていただきました。昭和27年銘のめんどり、おんどりの箇所、階段切れ目 有無 のみ書き直しました。鈴木氏のように細分類までする必要はありません。神吉氏のように大分類のみ分類しました。分類方法に納得されない方もおられるに違いありません。
 
なお、手変わり収集の初心者の方は、コイン各部位の名称及び説明の頁にある拡大写真にて現行10円青銅貨の基本的デザインをじっくりと眺めていただき、その際に部位の名称なども頭の片隅に入れておいていただくと理解しやすくなります。
 1=鳳凰全体:大・小
          頭部形状:平常・変形 
          目:有・無
       2=鳳凰形状:色々有り(昭和27年のみ鳩型鳳凰orめんどり、鶏型鳳凰or
おんどり)
       3=足型:長・短、離れ:有・無
       4=大棟:太・細、1本・2本
       5=左右降棟:同長、左長・右短
       6=垂木:太・細、長・短
       7=隙間:大・中・小
       8=裳階枕:有・無、大・小
       9=階段(耳石)切目:有・無
      10=左石積み切目:有・無
  (左右隅楼共通)

       1=宝珠●:大小、ずれ:大・小
       2=宝珠高さ:大・小、左右の差
       3=左宝珠切目:有・無
       4=右凹●:大・小、ずれ:大・小
       5=切目の長さ:大・中・小
       6=隅棟形状:色々
       7=軒先凹●:有・無、大・小
       8=軒先線形:太・細、1本・2本
       9=軒先形状:コ型・>型
      10=翼楼大棟線形:太・細
      11=翼楼瓦縦線:長・短
      12=隙間:大・小
      13=前楼破風形状:階段型・楔型
      14=前楼破風切目:有・無

部位名称については、文化財探訪クラブ3・寺院建築(山川出版社)等参照

 
紹介することにより、少しでも手変わり収集に対する興味、関心、理解が深まり、新規の手変わり収集家の誕生に貢献できればと願っています。